不妊専門鍼灸院 銀のすずは
自然妊娠から体外受精までの方を専門でサポートしています。

妊活に限らず、生きていると『血行を良くしてね』という言葉をよく聞きませんか?
当たり前ですが、とても重要なことです。
私たち、鍼灸マッサージも血行を良くすることに命を懸けているといっても過言ではありません。
なぜなら血液には、アミノ酸や酸素などの栄養素や二酸化炭素、アンモニアなどの老廃物が流れています。
薬を飲んでいる場合は、血液を介して流れる薬もたくさんあります。
卵胞刺激ホルモンやエストロゲンなどのホルモンもまた、血液を介して目的地へと流れていきます。
東洋医学では、エネルギーである気を全身に運搬するために、脈があり、経絡があり、血があり、水があります。
流れが滞ることで病になると考えるため、鍼灸マッサージでは滞りを解消していきます。
どちらの医学であろうと、血行が生命活動を営む上では欠かせないことであることは間違いはないかと思います。
妊活において、卵子や精子の発育や着床時、妊娠維持など常に血液がしっかり流れていることが重要です。
もし流れていないとなると、育つものも育ちません。
せっかく良好な受精卵なのに・・・、妊娠したのに・・・流産してしまったではとても残念で仕方ありません。

そこで血行と深い関りのある血液凝固系と線溶系について学びましょう!!!

出血は血液が血管外に流出する現象をいいます。
通常では、血液は血管外でのみ凝固します。

血管内皮細胞(血管の内側)は強い抗凝固性を持ち、また強力な陰性荷電を帯びています。

凝固異常、血栓、血行不良、着床障害、不育症

血管内皮細胞と血小板、血小板と血小板同士が反発するので、血小板凝集することがありません。
また、血管内皮細胞からプロスタサイクリン(PGI2)が作られ、血小板のトロンボキサンA2(TXA2)との拮抗作用によって血小板凝集を阻止しています。
このようにして正常であれば血管内で血小板が止血に働くことがないことがわかります。

血管が傷ついて出血した場合、生命にかかわる危険な状態になります。
そこで、血液の流出を防ぐ仕組みが働きます。
これが「止血」です。

止血には二つの段階があって、まず一次止血と呼ばれる仕組みが働きます。
この際、血液中の「血小板」が重要な働きをします。
血小板が血管の傷ついた部分にくっつき、止血が始まります。
さらに血小板同士が集まって塊を作り、損傷部をふさぎます。
これが一次止血です。

次に、この塊をより強固なものにするため、血液中のもう一つ重要な因子である「凝固因子」が働きます。
凝固因子は数多くあって、複雑にお互いに反応、制御しあって最終的に「フィブリン」という糊(のり)のようなものをつくります。

この凝固因子の反応は、血小板膜の表面や血小板がちぎれてできた断片の表面で加速され、血の塊を強固にし、出血を止めます。
この血の塊が「血栓」なのです。
ですから、血栓が完成するには血小板と凝固因子が欠かせません。

血栓、凝固因子、血小板、血行不良

止血が完了し、使い終わった血栓をそのまま残しておくことはできず、『線溶系』を使って細かく分解します。
血栓をフィブリンといい、プラスミンを使って分解していきます。
分解されたものをFDP(FgDPも含む)というフィブリン分解産物といい、その中にDダイマーが存在しています。
これで傷を負った血管は修復され、止血がコンプリートされました。
血栓と言うと悪いイメージがあるかもしれませんが、出血を止めるには必要な過程ですし、その後の処理も私たちの身体は線溶系で行ってくれます。
人体はよくできていますね!!!

血栓、凝固因子、血小板、血行不良

ただし、血栓を作る過程にトラブルがあった場合、出血が止まらない、出血もないのに血栓ができるというトラブルが発生します。

出血が止まらないケースは、生まれつきの病気である血小板無力症や血友病が有名です。
出血もないのに血栓ができる病気は血栓症といい、妊活において多々問題となります。

では妊活に影響のある血栓症についてみていきましょう。

いまだ血栓症を発症していないけど、何らかの誘因により血栓症を起こしやすくなっている状態を『血栓傾向』もしくは『血栓準備状態』と呼びます。
このような状況になるのは2つ。

・止血を促進する血小板や血液凝固因子の作用亢進
・血小板凝集抑制物質、血液凝固抑制因子、線溶物質など血栓抑制因子の低下

さらに血栓傾向は先天性と後天性に分かれます。
先天性血栓傾向は、生理的抗凝固因子であるプロテインC、プロテインS、アンチトロンビンⅢの欠乏、線溶異常であるプラスミノゲン異常症や異常フィブリノゲン血症があります。
後天的血栓傾向は、抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫性疾患や血液疾患、悪性腫瘍に合併した場合に起こります。
これらの疾患は血液検査によって見つけ出すことが可能です。
プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン時間(TT)、フィブリノゲン量、トロンボテスト、ヘパプラスチンテスト、凝固因子活性定量(Ⅱ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅹ、ⅩⅡ、ⅩⅠ、Ⅸ、プレカリクレイン、高分子キニノゲン)、フォンヴィレブランド因子測定、プラスミノゲン測定、FDP測定、Dダイマー測定、アンチトロンビン、プロテインC測定、プロテインS測定、抗Ⅷ因子抗体、ループスアンチコアグラント、β2-GPI抗体、トロンボモジュリン、プラスミンインヒビター、プラスミノゲンアクチベータインヒビター、可溶性フィブリンモノマー複合体、トロンビンアンチトロンビン複合体、プラスミン-プラスミノゲンインヒビター複合体などの検査を実施します。
ただし、検査の結果が100%を表しているわけではありませんし、妊娠をしたい人と健康な人の基準が違います。
よって血液が固まりやすい傾向にあるのか、そうでもないのかの判断が重要です。
血液凝固傾向の場合、アスピリン(バファリン)、ヘパリンなどが使用されます。
比較的不妊の原因になりやすいものは『抗リン脂質抗体症候群』でしょう。
カルジオリピン、ホスファチジルセリンなどの陰性荷電を有するリン脂質に対する抗体です。
その抗体は抗カルジオリピン抗体(aCL)とループスアンチコアグラント(LA)が有名です。
抗リン脂質抗体によって血管内皮細胞障害、血小板活性化、凝固因子産生増加、線溶因子抑制が考えられています。
確かにこれでは血液が凝固しやすいですね。
以前より、SLE(全身性エリテマトーデス)の患者様は流産が高頻度であることがわかっていました。
自分を攻撃してしまう自己抗体があると発症しやすいのでしょう。
多くの場合はアスピリンとヘパリンでコントロールしていきます。
血液検査でできる凝固検査、線溶検査、免疫の検査を一覧にします。
赤文字で示したものは不妊関連です。

凝固機能検査、線溶機能検査、自己抗体、抗リン脂質抗体症候群

正常では、血管内を流れている血液が固まらないのは、外因系の組織因子が血液と触れることがなく、健全な血管内皮では接触反応が起こらないからです。

血栓、凝固因子、血小板、血行不良

さらに血液中や血管内皮細胞上にある凝固制御機構も血液が固まらないようにしています。
中でも『アンチトロンビン』と『プロテインC』による抗凝固機構が重要です。
アンチトロンビンは主に肝臓で作られる糖タンパク質で、1分子のアンチトロンビンが1分子のトロンビン(Ⅱ)とⅩaに不可逆的に結合して凝固を阻止します。

血栓、凝固因子、血小板、血行不良

プロテインCはビタミンk依存性の糖タンパク質で、肝臓で作られます。
トロンビン‐トロンボモジュリン複合体により活性化プロテインC(APC)となり、リン脂質とCa2+のある細胞膜表面で、プロテインSを補助因子としてⅤaやⅧaを失活させます。

血栓、凝固因子、血小板、血行不良

妊娠をするとプロテインCと第12因子は増加しますが、プロテインSは減少します。
また日本人はプロテインS欠乏症が多いといわれています。

人体はとても精密に作られていることがわかります。
ざっくりと血液が固まらないようにするメカニズムは理解できました。
ようは血液の流れが悪くなり、その場であったり、その先に栄養が送れず、栄養失調となってしまうことで、生命として正しい活動ができない状況になります。

妊活の場合、『不育症、着床障害』が問題となり、また良好な卵子や精子に育ってほしいと願うのであれば卵巣や子宮に栄養である血液が流れていかなくてはなりません。
私は常に提唱していますが、血液には栄養物、老廃物、薬物、ホルモン、酸素と二酸化炭素などが流れます。
よって最高の血液が、しっかりと流れていることが生き物が生きていくには最重要であるということです。
その血流が血行不良により流れなくなるのでは困ったものです。
その血流を悪くさせる凝固反応の過剰であったり、線溶反応の脆弱性であることはまさに致命的です。

まとめとして、血流を考えるにあたり重要な点を上げます。
1.血液の質
2.血管の状態
3.心臓の働き
4.腎臓の働き
5.肝臓の働き
常に考えながら生活することが大切になります。

1.血液の質は溶けている物質の量と水分の比率、溶けている物質の質が大切です。
比率でいえば血液の水分量は約60%ですので、日々の生活で水分がしっかり補給できているかどうか。
前にも書きましたが、2.5リットルの水分は欲しいものです。
妊活と水について
また、糖質や脂質の過剰な状態は血液をドロドロさせてしまいますので注意が必要です。
塩分は喉が渇きますので、結果水分を多く摂ることになるので血液がドロドロになることはありません。

2.血管の状態は、動脈硬化はご高齢で発症するとお考えでしょうが、20代、30代、40代では肌の細胞と同じで老朽化していることは否めません。
特に小さく、細い血管は少しの老朽化でも影響は強くでると考えるのは当たり前です。
老朽化、老化を防ぐには『抗酸化作用』を高める必要があり、同時に『酸化』を進行させないことが大切です。

抗酸化物質であるポリフェノールビタミンCなどの摂取は当然として、過剰な酸素摂取、過剰なストレス、糖類による糖化、喫煙などは控えなくてはなりません。
さらに血管は自律神経によってコントロールされているので、自律神経の不調では正常な動きができないでしょう。

3.心臓の働きはポンプとして基本ですので、心臓機能が悪ければ全身に血液を送ることはできません。
心臓は血液を送ることも重要ですが、受け入れる場所でもあります。
静脈で帰ってくる血液が心臓に戻り、肺を巡らせ、二酸化炭素を酸素に交換し、全身に巡らせます。
静脈血には各臓器を巡り、各臓器で作られた物質(栄養物と老廃物)が溶け込んでいます。
この静脈血に酸素が加わり、動脈血となり、栄養物と老廃物、酸素が溶け込み、全身に流れていきます。
よって動脈だけが流れれば良いのではなく、静脈の流れもとても重要というわけです。
むくみがひどい場合は、静脈だけでなく、動脈の血流不全になりますので、直ちに解消したい問題です。
心臓が疲れることは妊活年齢にはあまり考えられませんが、それでも仕事量を増やすことは控えたほうが良いでしょう。
血液がドロドロしているより、サラサラしているほうが心臓への負担は軽減されることでしょう。
心臓もまた自律神経によってコントロールされているので、自律神経の不調では正常な動きができないでしょう。

4.腎臓は老廃物を捨てるフィルターのような働きです。
老廃物を捨てられないことで、各種内臓への負担が増えるのは当然です。
腎臓は心臓から送られた血液の25%が流れ込みます。
この25%をろ過して、老廃物を捨てます。
計算はちょっと違いますが、4回心臓が血液を送れば100%の血液をろ過することできます。
腎臓には尿細管という細い管を通してろ過するので、大きな物質は流れません。
例えば通常、赤血球は尿中には見られません。
しかし、細かい物でも大量にあった場合は目詰まりすることもあるでしょう。
尿の約98%が水で、タンパク質の代謝で生じた尿素を約2%含みます。
その他、微量の塩素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リン酸などのイオン、クレアチニン、尿酸、アンモニア、ホルモン、糖質を含みます。
血液の質が腎臓の機能に影響があるため、注意したいところです。
腎臓も自律神経でコントロールされています。

5.肝臓は物質の分解や合成をするいわば工場のような場所です。
食事からの栄養素も腸から肝臓に入り、糖質、脂質、タンパク質は作られます。
今回のテーマである凝固因子や線溶因子も大部分は肝臓で作られます。
余分な栄養素の貯蔵もします。
またアンモニア、アルコール、ニコチン、薬物などの分解や毒素の解毒作用、さらに胆汁の生産、赤血球の分解など多くの機能があります。
とにかく肝臓の仕事量は半端ないのです。
もしかするとこれだけの仕事をするから、すぐに悲鳴をあげられては困るから『沈黙の臓器』なんて言われているのかもしれません。
不妊治療ではどうしても多くの薬剤を使うことになるでしょう。
飲んでいない人に比べれば明らかに肝臓には負担となります。
疲労した肝臓は、分解力も合成力も落ちてしまうことが考えれます。
結果、必要な物質を作り出すことができず、しかも体に負担になるものが捨てられないでは困ってしまいます。
私たち個人が注意することは、肝臓が分解しなくてはならないものを取り込まないこと、そして作らなくてはならない栄養素を摂ることでしょう。
アルコールやニコチン、余分な糖類などの摂取に注意したいところです。
また良質な脂質やタンパク質の摂取も忘れてはなりません。
この後にご紹介する『タウリン』は肝臓を助けてくれます。
肝臓も自律神経でコントロールされています。

ざーっと書きましたが、日頃の生活を見直すだけで全身に与える影響が軽減することがわかります。
『血が固まりやすい』という現象がいかに恐ろしいことか・・・。
ただ血が固まるということは悪いことではなく、人間が本来持っているメカニズムで、そのメカニズムが誤作動してしまっているのです。
そのメカニズムを調整しているのは自律神経であり、自律神経を整えることはとても大切です。
今一度、生活スタイルに目を向けてみてはいかがでしょうか?

私たち針灸も自律神経を整えるお手伝いができますので、やるかやらないかは大きな違いです。
私が言うのもなんですが、積極的に取り入れたいところです。


何かございましたらご質問ください。
銀のすず